めがまわる

ずっとまわる、めがまわる

はまださんのこと

すっと伸びた長い首に薄い身体、細く、それでいてしっかりと形のある手足。わたしは彼の姿であれば離れたところからでも容易く見つけられるような気がする。


世界にはたくさんの形があって、わたしが今まで手に取ったものや通りすがりに触れたもの、触れたいと思ったもの、そのどれとも違う彼の形の全貌は、きっと彼が自分で引いた線の内側でしか見ることができない。


彼はきっと嘘をつかないし、不必要な言葉でわたしたちを騙すようなこともしない。けれど近づこうとするとするりと逃げられる。へらへらにこにこと笑いながらひらりとかわされる。余計なことは言わない代わりに、本当のことも話さない。一歩近づけば、一歩後ろに。後ろに回り込めば、気づけば前に。そんな風に、あの長い足で引かれた線の内側には、決して入れてくれない。まわりにはいつも誰かいて、愛されて、それでいて誰も内側に入れずひとりでも生きることができる。


優しくて穏やかで、激しい自己主張をせずになんでも受け入れてくれる。そんな風に言われることの多い彼だけれど「実体がない」というのがわたしの思う彼の姿だ。もちろんそれは外から見ての話で、彼自身には強い思いもあるだろうし、その実体を掴んでいる人だっているかもしれない。だけどわたしにとっての彼はその姿を掴ませてくれない、ふわふわと実体のない人だ。彼の持ついろんな姿の端だけをちらりと見せてはまた隠す。それをわざとやっているのか、それともなにも考えずに動いた結果なのか、わたしにはわからない。

じれったくて、やきもきすることだってあるけれど、それをゆっくり知っていきたい。全部を見せてくれなくたっていい。わたしがいつまで彼を好きでいて、いつまで彼を応援しているかはわからないけれど、1年後、5年後、10年後、わたしが彼を今と変わらず好きでいて、その時に今はまだ知らない新しい彼の端っこをまた少し見ることができていたらそれでいい。